
無記名自記式質問紙調査をインターネット上にホームページを開設して実施しました。

実施期間は1999年7月24日〜1999年9月30日です。

現在の精神的健康状態を客観的に測定するためにいくつかの心理尺度を使用しました。使用した尺度について簡単にご説明します。
〓〓異性愛者的役割葛藤(図2,3)

本研究実施に先立ち、機縁法サンプリングによりゲイ・バイセクシュアル男性へのインタビュー調査および二度に渡る予備調査によって、質問項目を選定しました。異性愛者的役割葛藤尺度は異性愛者を装うことでストレスを感じる状況場面を設定し、その時々に感じる役割葛藤の頻度を測定するものです。「彼氏のことを彼女に置き換えて話しているとき」「彼女いないの?と聞かれ、適当に話をあわせているとき」「『結婚話』をすすめられたとき」など15項目によって構成されています。尺度得点が高いほど異性愛者的役割演技をすることによってその役割演技に対する葛藤が高いことを表しています。この尺度は、6因子によって構成されており、第1因子は「結婚」に関する因子、第2因子は「異性愛者への迎合」因子、第3因子は「ゲイ・バイセクシュアルの交友関係」に関する因子、第4因子は「男性の恋人」に関する因子、第5因子は「伝統的性別役割分業観」因子、第6因子は「女性の恋人」に関する因子と命名しました。ゲイ男性よりもバイセクシュアル男性の方が、尺度得点は低くなる傾向にあります。
〓〓抑鬱

Zung WWK
[22]によって開発され標準化された尺度を福田・小林
[23]によって翻訳し、信頼性および妥当性を検討した上で商品化された尺度です。この尺度は自己評価により抑鬱状態を測定する尺度であり、スクリーニングテストとして活用されることが多く、本邦のみならず世界中で使われています。日本人の平均点は一般の健常者においては男性で35点、神経症患者においては男性で46点、鬱病患者においては男性で59点であると言われています。
〓〓特性不安

不安とは発汗、めまい、不眠などの生理的現象を伴った、漠然としたおそれのことをいいますが、不安は一般に恐怖とは異なり、不特定の不明瞭な、目標のない危険に対する反応だと考えられて
[24]います。不安は自律神経等の興奮が伴う一時的、状況的な不安と、ストレス状況に対して状態不安を喚起させやすい傾向で比較的安定した個人内特性による不安があります。特性不安はストレス状況下において前者を生み出す個人差特性
[25]すなわち、個人の不安傾向であると言えます。この尺度はSpielberger C.D.
[26]によって開発され標準化されたSTAIを水口、中里ら
[27]が翻訳し、信頼性および妥当性を検討した上で標準化し、商品化された尺度です。ゲイ・バイセクシュアル男性としての社会的ロールモデルが不在しがちな昨今、先の見通しのつかない漠たる不安を持つ傾向が高いと考えられ、またそれらは欧米の先行研究によっても示されているため、本尺度を質問紙に用いました。
〓〓セルフ・エスティーム

Rosenberg
[28]によって開発され、山本ら
[29]によって翻訳され、信頼性および妥当性を検討された自尊心尺度です。自分をどれだけ大切に思っているか、自分をどれだけ評価しているかというセルフ・エスティームを測定するものです。セルフ・エスティームの訳として、自尊心、自尊感情、自己評価等いくつか提出されていますが、本報告においては「セルフ・エスティーム」と表記を統一しました。
〓〓孤独感

Russel,Peplau & Cutronaら
[30]によって開発された孤独感尺度を工藤・西川
[31]が翻訳し、信頼性および妥当性を検討された尺度です。孤独感とは人間関係の中でわれわれがこうありたいという願望があるとき、その願望が十分に満たされなかったり逆に倫理的な満足感を低下させるような結果が生じたときに感ずる感情の1つであると定義しています。UCLA孤独感尺度は孤独感が社会的関係の不全に由来するという状況的立場から開発されています
[32]。
〓〓自己抑制型行動特性

宗像によって開発された尺度であり、信頼性および妥当性が検討された尺度です。自己抑制型行動特性とは、「思っていることを容易に口に出せない」「自分の感情を抑えてしまうほうである」「人の期待に沿うよう努力するようである」など、周りの人に気に入られようとして、自分の本音を抑えてその期待に応えようとする度合の強い特性を意味します
[33]。自己抑制型行動特性の強さは、慢性的なストレス状況に多く、神経症症状や抑鬱症状と比例しており、外的基準妥当性が確認されています
[34]。